潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは

腹痛症状がある女性大腸や小腸の粘膜(最も内側の層)に長く持続する炎症がおきる原因不明の病気を 炎症性腸疾患(IBD)といいます。
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症がおきて、潰瘍やびらんができる炎症性腸疾患です。
わが国においては近年、増加傾向を認めています。
発症のピークは20~29歳と言われています。
50歳代でも認めることがあります。
腹痛や下痢、血便、腹痛などの症状を認めます。
重症になると、貧血、発熱、体重減少などの症状を認めます。
症状が現れる活動期(再燃期)と症状が落ち着いている寛解期が交互に訪れます。
免疫の異常な働きによって発症するとされていますが、明確な発症原因は不明であり、現時点では完治は難しい病気であるため、厚生労働省から難病指定も受けています。
なお、適切な治療で炎症を抑え、症状が落ち着いている寛解状態を維持することで、発症する前と遜色ないような生活を送っていただけるようにもなります。

潰瘍性大腸炎の原因

明確な原因は不明です。
異物が侵入しないよう体を守る免疫の働きが乱れ、もともとは異物ではない大腸の粘膜が白血球などの細胞から攻撃されてしまう免疫異常の影響が大きいとされています。
食生活の乱れや、腸内細菌の乱れなど環境的な原因や、家族内での発症もあることから遺伝的な原因などが複雑に影響していると考えられています。

潰瘍性大腸炎の症状

腹痛症状がある女性下痢、血便、腹痛が代表的な症状で、血液と粘液が混ざった粘血便が出ることもあります。
また、重症になると、貧血、発熱、体重減少を認めます。
上記の症状はクローン病や感染性腸炎などその他の疾患でも見られたこともあります。

そのため血液検査、便培養検査、大腸カメラ検査、組織検査などを受けていただき、正確に診断した上で、最適な治療を受けることが大切です。
特に、クローン病は、起こり得る症状や活動期(再燃期)と寛解期が交互に訪れるという特徴が似ていますが、
潰瘍性大腸炎とは治療方法が異なることもありますので、しっかりと判別することが求められます。

潰瘍性大腸炎の検査

大腸内視鏡検査問診の際に、丁寧に病状をお聞きします。
血液検査、便培養、大腸カメラ検査、組織検査などの結果を総合して診断します。
状況次第ではCT検査やMRI検査を検討します。
確定診断には大腸カメラ検査が欠かせません。
大腸カメラ検査によって、潰瘍性大腸炎に特徴的な病変を認め、大腸の粘膜を生検(組織を採取)し、病理検査に提出することで確実に診断します。
大腸カメラ検査の時に、炎症や潰瘍の状態、程度を正確に確認することで、病状に最適な治療を行うこともできるようになります。
また発症後10年程度たちますと、潰瘍性大腸炎による大腸がんが発症するリスクが高まります。
定期的に大腸カメラ検査を受けていただくことが、大腸癌の早期発見に役立ちます。
当院では、高性能な内視鏡システムを導入しており、日本内視鏡学会 専門医が検査を担当します。無痛検査、炭酸ガス使用など患者様の苦痛が極力少なくなるよう努めています。

重症度分類

適切な治療を受けていただくために、重症度分類に基づく診断が不可欠です。
重症度分類では、重症・中等症・軽症に大別されます。顕血便(便にわずかに血液が付着する状態~大部分が血液まで)・発熱・排便回数・赤沈・頻脈・貧血という6項目で判定します。重症かつ激しい症状が現れている場合は、劇症と判断します。
細かく数値が定められていますが、簡潔に言うと、顕血便が無い(もしくは少量)、排便回数4回以下、貧血・赤沈・発熱・頻脈が正常であれば軽症となります。
一方で、顕血便のほとんどが血液、排便回数6回以上、発熱もしくは頻脈があり、これらの4項目以上に該当する場合は重症と判断されます。
炎症の範囲で、直腸炎型、左側結腸炎型、全結腸炎型に分類されます。
中等症以上と診断された場合、難病医療費助成制度の対象となります。
軽症の場合も長期にわたって治療が必要な場合は、軽症高額該当として難病医療費助成の対象となることがあります。
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潰瘍性大腸炎の治療

薬お薬によって炎症を抑える内科的な治療がメインとなります。
お薬が効かず重症となった場合や、がんを認めた場合は外科的な手術による治療が必要となります。

活動期ではできるだけ早く炎症を抑えて、症状が改善するように治療に取り組みます。
寛解期ではなるべく炎症がおきず、症状がなく快適に過ごしていただけるように治療に取り組んでいきます。活動期と寛解期が交互に訪れる特性があるため(再燃・寛解をくり返すと呼ばれます)、寛解期に症状がないからといって、適切な治療を中断してしまうとすぐに症状が再発(再燃)する恐れがあります。
慢性的な炎症によって潰瘍性大腸炎の症状がひどくなるのみならず、様々な合併症のリスクが高まります。
炎症が長期化することで大腸がんの発症のリスクが高まりますので、注意が必要です。
活動期と寛解期のいずれでも5-アミノサリチル酸製剤による治療が基本となります。重度の炎症が起こっている時期にはステロイドを使って炎症をなるべく早く抑制できるようにすることもあります。
その他、血球除去療法(白血球吸着除去療法(LCAP)、顆粒球除去療法(GCAP))、抗TNFα製剤などのバイオ製剤、免疫調整薬を使うこともあります。
また腸に炎症があり潰瘍性大腸炎の症状がある時は、食生活などの生活習慣を正すことも重要です。
症状の悪化を防ぐために、適切なお食事に関するアドバイスをさせていただきます。
現在は、炎症性腸疾患に有効とされるバイオ製剤の投薬方法の選択肢も広がりました。1日でも早く治療することで症状を軽くし、病気のことを忘れて過ごせるお手伝いをさせていただきます。

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